1. 理事長メッセージ
●「財務情報の安心と信頼」をお届けするため、専門性と組織力により安定運営を実現する監査法人を目指す
当法人は「地域に根ざしたさまざまな事業体・組織に監査業務やアドバイザリーサービスを提供することを通じて、我が国の地域社会の持続的な発展に貢献する」ことを基本理念に掲げています。会計・監査に関する専門知識と全国各地域の監査経験を基礎に、職業的倫理観を持ってステークホルダーの皆さまからの信頼を得ることにより公正な社会の実現に寄与する使命をもって活動しております。
このため、上場会社の監査は行わず、非営利組織、地域で活動される金融機関の監査を専門重点分野として、「特化型」、「地域」をキーワードとして運営しています。運営にあたっては、国の推進する「地域金融を強化していく方針」も視野に入れ、地域金融の信頼性確保、地域や社会への貢献を目標としております。
当法人が考える監査品質とは、「独立性・専門性といった倫理観に裏打ちされた信頼の総和」であり、これを高め続けることが当法人の存在価値だと考えます。私たちは、会計・監査や監査先業務に精通したメンバーがワンチームとなり現場の最前線に立ち、対話を重ねるプロセスを重視して業務を進めております。監査先の実情を深く理解し、指導的な役割を果たしながらも、社会やさまざまなステークホルダーからの財務情報の提供を支えるインフラとして信頼されるよう使命職責を全うしてまいります。
また、最新のAIやデータ分析ツールの導入、外部専門家とのネットワーク拡充により、地域や規模の制約を超えた次世代に通じる監査の提供を実現することを目指しております。
法人内部におきましては運営方針を各人に浸透させ、より品質管理のマインドを高めるため、研修、会議、各地域拠点訪問など、あらゆる機会をとらえ、監査法人の最大の使命、職責が「監査品質の維持」であることを繰り返し伝えております。この積み重ねが、監査法人として備えるべき風土や文化、伝統を醸成していくものと考えております。
私たちは「地域に根ざし、全国のステークホルダーから選ばれる信頼される監査法人」を目指して、全員が高度なデジタル装備をなし、当法人の監査先の業種特性を踏まえた共通の監査手法を開発、実践し、高度化と効率化の同時達成を進めてまいります。また、多様な人材が柔軟に働ける環境整備を行い、社会の一員としての責任を果たしてまいります。
理事長 大森 一幸
2. 法人概要
(1)基本理念及び行動指針
①基本理念
当法人の基本理念は以下のとおりです。
②行動指針
当法人は、業務を通して、地域社会の発展に貢献することを基本理念に掲げています。これを達成していくため、社員職員は地域社会における監査法人の役割を意識し、直接的・間接的な立場から、業務提供先の健全性に資する業務を提供します。監査法人の社員職員として、公明正大で揺るぎない姿勢から、高い専門性を発揮し、関係組織からの信頼を得ていくため、行動指針を以下のように策定しています。
- 1プロフェッショナルとして高い業務品質を堅持し、責任ある行動をとる。
- 2常に職業倫理を保持し、独立性と公正性を確保する。
- 3自己研鑽と積極的な議論を通じた知見・経験の共有に努め、業務による価値創造を行う。
- 4法人内外において、多様性を尊重し、活発な対話により信頼関係を構築する。
- 5時代の変化を俯瞰し、新しいアイデアやテクノロジーを積極的に取り入れる。
(2)当法人の設立経緯
当法人は、農協改革の一環としての農業協同組合法の改正により、農業協同組合(JA)に対する公認会計士監査が義務化されたことを背景に、四大監査法人出身者が出資者となり、2017年6月に設立されました。
2019年度から農業協同組合の会計監査業務を開始し、さらに、信用金庫・信用組合、消費生活協同組合、漁業協同組合といった地域社会を支える協同組合等の会計監査業務を展開しています。
(3)特徴
当法人は、地域に根ざした監査法人として、いくつかの特徴を持っています。
①地域を重視した全国的ネットワーク
当法人は、全国の協同組合に対する会計監査業務を実施するため、全国のほとんどの都道府県に事業展開しており、全国的なネットワークを有していることが大きな特徴です。
全国を4ブロックに区分し、それぞれのブロック内で人材交流やブロック研修等を通じて、それぞれの地域性を有するメンバーによる活発な意見交換を促し、法人として一体的な組織文化の醸成に努めています。
品質管理面では、品質管理本部を設置し、統一的な方針・標準的な手続を定めることにより、全国的に品質に差が生じないような体制を構築しています。
なお、全国的な事業展開により、地域貢献を意識する人材の確保にもつながっています。
②サービス提供内容
当法人は、地域社会の持続的な発展への貢献を重視しています。
そのため、地域に密着した協同組合等を中心に、会計監査を中心とした業務を提供する方針をとっており、上場会社の監査は実施していません。
③多様な構成員による品質向上とコミュニケーションの重視
当法人は経験豊富な四大監査法人の出身者により設立されました。その後は、経験と人物本位での採用を継続しており、様々なバックグラウンドを持つ多様な人材を確保しています。この多様な構成員が当法人の強みとなっており、様々な知見や経験に基づき、内部で活発な議論を重ねた上で、バランスのとれた高品質な監査を提供できる体制となっています。
また、監査先との双方向のコミュニケーションを重視しています。デジタルの活用により、監査業務の高度化・効率化を図っていくものの、対面でのコミュニケーションも重視しています。
④多様性の尊重と働きやすい環境の整備
当法人には、公認会計士だけではなく、農業及び協同組合に知見のある農業協同組合監査士(注)も多数在籍しています。公認会計士の出身監査法人は様々であるうえ、農協監査士も各地域に密着した人材であり、多様な価値観の人材で構成されています。この他、弁護士・税理士・社会保険労務士とも連携しています。
当法人は、行動指針として制定しているとおり、多様性を尊重し、活発な対話により信頼関係を構築することを目指しています。
具体的には、人材交流や参加型の研修等を通じてコミュニケーションを促進している他、働きやすい環境の整備に向けて、柔軟な人事制度を設計しています。
農業協同組合及び農業協同組合連合会の業務及び会計について専門的知識及び実務の経験を有する者で農林水産省令で定める資格(農業協同組合監査士(国家資格、以下「農協監査士」という。)を有するものをいう。
農協監査士は農業協同組合監査士資格試験(試験科目の内容:監査理論及び監査の実務、財務諸表論、簿記理論及び農業協同組合の簿記実務経営学概論及び管理会計論、農業協同組合法及び農業協同組合論、法人税法、民法)に合格し、合格後に所定の要件を満たすことで認定されます。
(4)法人概要・沿革(2025年6月30日現在)
なお、本部事務所の他、国内サテライトオフィス43か所
社員・職員数
| 公認会計士 | 126名 |
| (うち社員71名) | |
| 農協監査士(監査士補含む) | 272名 |
| 専門職員等(IT専門家含む) | 29名 |
| 合計 | 427名 |
※非常勤者を含まない
監査先
| 農業協同組合法監査 | 472 |
| 信用金庫法・信用組合監査(※1) | 8 |
| 水産業協同組合法監査 | 11 |
| 農業信用保証保険法監査 | 7 |
| 会社法監査 | 2 |
| 会社法・金融商品取引法監査(※2) | 2 |
| 消費者生活協同組合法に準じた監査 | 1 |
| 投資事業有限責任組合契約法監査 | 1 |
| その他 | 4 |
| 合計 | 508 |
(※1)うち信用組合(中小企業等協同組合法に基づく監査)は5組合
(※2)金融商品取引法監査は、2社とも非上場会社
沿革
| 年月 | 内容 |
|---|---|
| 2017年6月 | 設立 |
| 2019年4月 | 農業協同組合への監査業務の提供を開始 |
| 2021年7月 | 信用組合への監査業務の提供を開始 |
| 2023年6月 | 消費生活協同組合への監査業務の提供を開始 |
| 2023年7月 | 漁業協同組合への監査業務の提供を開始 信用金庫への監査業務の提供を開始 |
| 2024年8月 | 投資事業有限責任組合への監査業務の提供を開始 |
(5)ネットワークファーム
当法人は、国際的なネットワークファームには加盟していません。
1. 組織・ガバナンス基盤
(1)ガバナンス体制
当法人は、監査法人の公益的な役割を深く認識し、その責任を果たすべく、強固かつ実効性のある組織体制とガバナンス基盤の構築に尽力しています。また、健全かつ持続的な法人経営を実現するため、透明性、公正性、そして高い倫理観に基づいたガバナンス体制を整備し、社会からの信頼に応えることを重要視しています。特に、監査品質の向上を経営の最重要課題と位置づけ、その実現のために実効性のあるガバナンス体制を運用しています。
当法人では、「無限責任社員制度」を採用し、この制度に基づいた強固なガバナンス体制を構築しています。この制度は、当法人に所属する全ての社員が、法人運営に対する無限の責任を負うことを意味しており、業務執行に対する高い責任感が醸成され、結果として、より慎重かつ公正な意思決定と業務遂行が期待されます。これにより、社員一人ひとりが高いプロフェッショナリズムと倫理観をもって業務に臨むことが促され、同時に、公認会計士法が想定する社員間の「相互監視」が機能し、組織全体の規律が確保される体制となっています。
当法人のガバナンス体制は、最高意思決定機関としての社員会、業務執行に関する意思決定機関としての理事会、そしてその業務執行及び法人の財務に関する事項を監査する監事、さらには独立した第三者の立場から監督・評価を行う経営監視特別委員会より成り立っています。これらの機関がそれぞれの役割を十分に果たし、経営の透明性と健全性を維持し、公益的な役割を果たす上で不可欠な信頼性を築くことを目指しています。当法人は、監査法人のガバナンス・コードの原則に則り、実効的な経営機能の発揮と、それに対する適切な監査・評価機能の確保に注力しており、これが監査品質の持続的な向上への揺るぎない基盤となっています。
(2)組織体制
当法人の組織体制は、最高意思決定機関である社員会を頂点に、業務執行を担う理事会、そして独立した監査機能を果たす監事及び経営監視特別委員会が相互に連携し、組織的な運営の適正性を確保するよう設計しています。
①社員会
社員会は、無限責任社員制度を採用する当法人において、経営の基盤を形成する最高意思決定機関として位置づけています。
社員会は、全社員が法人の進むべき方向性について議論を交わし、その意思と責任が反映された組織的な合意形成を図る場として機能しており、経営における透明性と責任感を高め、各社員が法人の運営へ主体的に関与する意識を恒常的に高めることに貢献しています。
- 定時の開催が原則(必要に応じて臨時に開催)
- 経営に関する重要な事項を審議・決定
- 社員会での審議を実効性あるものとするため、随時、パートナー会議を開催
②理事会
理事会は、社員会で選任された理事長及び理事の計7名によって構成される当法人の業務執行に関する意思決定機関であり、当法人の経営執行を担う中核組織です。理事会は原則として毎月1回以上開催され、理事会においては、各理事がそれぞれの分掌の立場から組織運営上の課題を議論し、法人の経営方針や戦略を決定するとともに、その実行を指揮します。
さらに、経営課題を幅広に検討・協議するため、理事長と理事を構成員とする経営協議会が設置されており、毎月複数回の頻度で開催されています。この経営協議会は、経営の実効性を一層担保するために重要な機能を果たしており、法人の経営課題、監査品質に関する重要事項、人事戦略、その他組織運営上の重要案件について、各案件に関係する部室長等も必要に応じて参加し、十分な時間を確保した上で集中的な検討と協議を行っています。
- 迅速かつ適切な意思決定と実効性のある業務執行の推進
- リスクマネジメントの強化や内部管理体制の質の向上
(2)組織体制(続き)
③監事
監事は、独立の機関として、理事及び理事長の職務の執行及び当法人の財務に関する事項を監査する機関として位置づけています。当法人の監事は、業務経験が豊富な3名の社員が選任されており、その専門的な知見と豊富な経験に加えて当法人の内部管理体制の理解に基づき、理事会や経営協議会への出席や資料の閲覧、部門責任者へのヒアリング等を通じて、職務の執行状況や当法人の計算書類等の適切性を監査しています。
また、監事3名で組成する監事会を定例的に開催し、監事間での情報共有、意見交換を通じて、各監事の監査機能の実効性を高めており、経営監視特別委員とも意見交換を実施しています。
④経営監視特別委員会
経営監視特別委員会は、当法人におけるガバナンス体制を一層強化するために設置された、独立性を有する第三者から構成される監督・評価機関です。この委員会は、法人外部の有識者3名を委員として選任しており、その目的は、経営機能の監督・評価に外部の客観的かつ専門的な知見を積極的に活用することにあります。委員は、行政庁OB、学識経験者、企業CFO経験者等といった各分野の専門家であり、この独立した第三者の視点を取り入れることで、組織的な運営の確保と公益的な役割を果たす観点から、法人が認識する課題等に対し、より多角的かつ深い洞察に基づく提言を得ています。
経営監視特別委員会に対しては、当法人の経営課題やリスクへの取り組み状況を随時詳細に報告しています。また、各理事及びブロック長、本部審査会会長、監事等が自身の所管業務や専門領域について説明を行う機会を設けることで、委員が法人の実態を深く理解し、的確な助言や評価を行える環境を整備しています。この取り組みは、経営機能の実効性をさらに高め、客観的な評価を通じて法人の持続的な成長と監査品質の不断の向上を支援する重要な役割を果たしています。当法人は、委員からの意見を積極的に経営に反映させることで、ガバナンス体制の一層の強化と透明性の向上に努めています。
委員の選任にあたっては、候補者の知見及び経験を考慮し、当法人と利害関係のない適任者を理事会で選任しています。
(2)組織体制(続き)
<経営監視特別委員の略歴>
佐々木 清隆 氏
| ・1983年 大蔵省(現財務省)入省 | |
| ・1998年 金融監督庁(現 金融庁)検査部総括補佐、検査企画官、OECD(パリ)、IMF(ワシントンDC)職員、金融庁検査局審議官、公認会計士・監査審査会事務局長、証券取引等監視委員会事務局長、総括審議官 | |
| ・2019年 金融庁総合政策局長退官 | |
| 退官後、一橋大学大学院経営管理研究科客員教授に就任(現在に至る) |
福川 裕徳 氏
| ・2012年 一橋大学大学院商学研究科教授 | |
| ・2017年 国際会計士倫理基準審議会ボードメンバー | |
| ・2018年 一橋大学大学院経営管理研究科教授(現在に至る) | |
| ・2020年 日本公認会計士協会業務本部主任研究員 | |
| ・2024年 一橋大学大学院経営管理研究科長・商学部長(現在に至る) | |
| ・2025年 日本公認会計士協会上場会社等監査人登録審査会委員(現在に至る) |
川島 勇 氏
| ・2015年 日本電気株式会社取締役執行役員常務兼CFO | |
| ・2017年 日本電気株式会社代表取締役執行役員常務兼CFO | |
| ・2018年 日本電気株式会社常勤監査役 | |
| ・2020年 公益社団法人日本監査役協会副会長 会計委員会委員長 | |
| ・2022年 三精テクノロジーズ株式会社 社外取締役就任(現在に至る) | |
| 日本高純度化学株式会社 社外取締役就任(現在に至る) | |
| ・2023年 AGC株式会社常勤監査役就任(現在に至る) |
⑤組織体制の変更
2025年7月に組織体制を変更し、ガバナンス体制、リスク管理、コンプライアンスの遵守及び推進、業務遂行の効率化等の更なる強化のため、新たに法務部を設置した他、業務のデジタル化の推進を担っていたDX委員会と管理部システム企画グループを統合して統合デジタル戦略部を設置しました。加えて、監査業務の高度化・効率化のため、品質管理本部に高度化推進室を設置し、統合デジタル戦略部とともに業務改革戦略会議で実行施策を検討しています。
(3)理事の職歴
経営機能を果たす人員の選任において、監査実務への精通だけでなく、法人の組織的な運営のための機能が十分に確保されるよう留意し、社員の投票により、理事長を選任しています。
理事については、企画立案能力、リスクマネジメント、実行力、影響力、積極的な経営関与の責任感等を考慮して、理事長が適任者を選出し、社員会の決議により選任しています。
大森 一幸
| 1978年 | 監査法人朝日会計社(現有限責任あずさ監査法人)入所 |
| 品質管理本部長等主に監査業務の品質管理を担当 | |
| 2017年 | みのり監査法人設立に参画し理事長就任(現在) |
| 早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師、他 多数の研修講師実績 |
種村 隆
| 1989年 | 太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所 |
| 会計監査業務、アドバイザリー業務・パブリック業務に従事 | |
| 2005年 | 同法人 社員就任 |
| 2018年 | みのり監査法人 入所 |
| 2019年 | 同法人 社員就任 |
金谷 直
| 1987年 | 太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所 |
| 会計監査業務、アドバイザリー業務、品質管理業務等に従事 | |
| 2006年 | 同法人 社員就任 |
| 2018年 | みのり監査法人入所 社員就任 |
篠塚 仁彰
| 2003年 | 朝日監査法人(現有限責任 あずさ監査法人)入所 |
| 会計監査業務、アドバイザリー業務等に従事 | |
| 2017年 | 全国農業協同組合連合会中央会 入会 |
| 2019年 | みのり監査法人 入所 |
| 2019年 | 同法人 社員就任 |
服部 克栄
| 1998年 | 監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入所 |
| 会計監査業務、アドバイザリー業務等に従事 | |
| 2018年 | みのり監査法人入所 社員就任 |
鳴川 貴久
| 1998年 | 太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所 |
| 会計監査業務、アドバイザリー業務に従事 | |
| 2017年 | 会計アドバイザー会社入社 |
| 2018年 | みのり監査法人 入所 |
| 2019年 | 同法人 社員就任 |
山口 直志
| 1989年 | 監査法人朝日新和会計社入所(現有限責任 あずさ監査法人) |
| 会計監査業務、アドバイザリー業務に従事 | |
| 2003年 | 同法人 社員就任 |
| 2018年 | みのり監査法人 入所 |
| 2019年 | 同法人 社員就任 |
2. 品質管理基盤
(1)品質管理に関する基本方針と体制
当法人は、監査品質の向上を経営の最重要課題と位置づけており、品質管理に関する基本方針として、監査の品質管理規程を策定し、プロフェッショナルとして全社員及び職員が遵守すべき事項を明確化し、その内容を研修により周知しています。監査の品質管理規程は、「監査に関する品質管理基準」、「監査事務所における品質管理」に準拠して作成しています。また、必要に応じて、細則やガイドラインを作成することにより、社員・職員にとってルールが明確になるようにしています。
また、理事長自ら全社員及び職員に対し、監査品質に関連する心構えをメッセージとして随時発信するとともに、業務チーム内の討議等における社員・職員の双方向のコミュニケーション、社員・職員の集合研修であるブロック研修や業種別グループ研修での監査品質や不祥事例に関するディスカッション等を通じて、専門家としての職業的懐疑心を重視する組織風土の醸成を図っています。
品質管理に関する組織体制として、品質管理本部を設置し、品質管理に関する方針・手続を検討・制定し、その実施状況を評価しています。品質管理本部内の各部署の機能は以下のとおりです。
| 部署 | 機能 |
|---|---|
| 品質管理部 | 品質管理に関する企画・調整、職業倫理及び独立性、監査調書管理等 |
| 監査技術部 | 監査手続に関する検討等 |
| 会計監理部 | 会計処理に関する検討等 |
| 監査モニタリング部 | 品質管理システムのモニタリング及び改善 |
| 情報セキュリティ室 | 情報セキュリティに対応する役割等 |
また、品質管理基準報告書第1号に基づく、リスク評価プロセスを担う組織として、所内各部門の委員から成る品質管理委員会を設置しています。
品質管理本部は、経験豊富な公認会計士を中心に十分な人員を配置しており、2025年6月末の人員数は45人(兼務者含む)となっています。
品質管理本部の人員数
| 2024年6月30日 | 2025年6月30日 | |
|---|---|---|
| 人員数 | 45人 | 45人 |
加えて、監査事業本部内の各ブロックに品質管理担当者を配置し、品質管理本部との連携を図っています。法人の品質管理に関する方針・手続を各業務チームに浸透させる役割の他、品質管理本部に対する要望を伝達する機能を担っており、法人として一体的な品質管理体制を構築するとともに、それぞれの地域、業種特有の課題について情報を共有することで品質管理の向上を目指しています。
なお、当法人及び監査先を取り巻く環境が大きく変化する中、監査理論に裏打ちされた監査業務の高度化と効率化を一層推進し、高品質な監査業務を全国の監査先に継続的に提供するため、2025年7月に品質管理本部内に高度化推進室を新設しています。
(2)監査品質に関するリスク評価プロセス
当法人の品質管理システムの整備及び運用にあたっては、「監査に関する品質管理基準」及び品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」を適用しています。当該基準等に基づき、当法人の品質管理システムの整備及び運用において、リスク・アプローチの考え方を導入しており、当法人の経営環境や提供する監査業務の特性を考慮した品質目標を設定し、その品質目標の達成を阻害し得るリスク(品質リスク)を識別及び評価するとともに、品質リスクに対処するための対応の適切性を検討しています。
リスク評価にあたっては、品質管理部が事務局として品質リスクを識別・評価したうえで、当該評価の適切性や追加の品質目標の設定の必要性、品質リスクへの対応については品質管理委員会によって確認し、その結果を品質管理システムに関する最高責任者である理事長に報告しています。
(3)職業倫理及び独立性
①職業倫理及び独立性の遵守
当法人は、高品質な監査を提供するための基盤として、すべての社員及び職員がプロフェッショナルとして高度な職業倫理及び独立性を確保することが重要であると考えています。
このため、日本公認会計士協会の「倫理規則」に基づき、当法人が留意すべき点を考慮した規程等を策定し、社員及び職員はこれを遵守することとしています。これには、贈答・接待や社員及び職員が当法人の監査先に就職する場合のルールも含まれています。
また、当法人及び職員の監査先に対する独立性を確認するため、毎年「監査人の独立性チェックリスト」の提出を全社員及び職員に対して求めています。品質管理部は、「監査人の独立性チェックリスト」を通じて阻害要因を把握し、該当者に対して特定の業務への関与を制限するとともに、従事状況をモニタリングしています。
なお、「監査人の独立性チェックリスト」提出後の状況変化や新たに懸念事項が生じた場合等は品質管理本部へ問合せることとしており、違反があった場合は品質管理本部が中心となり対応することとしています。
さらに、非監査業務を提供する場合にも、提供中の監査業務への影響や独立性の遵守を十分に考慮して受嘱の可否を判断しています。
独立性に関する「監査人の独立性チェックリスト」の提出率及び違反件数
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | |
|---|---|---|
| 提出率 | 99.8%(注) | 100% |
| 違反件数 | 0件 | 0件 |
(注)非常勤職員の未提出が連絡ミスにより1件ありましたが、事後的に違反がなかったことを確認しています。
監査先との馴れ合いを防止するために、監査業務の主要な担当社員等(監査責任者、審査担当者及びその他の監査業務の主要な担当社員等)に関して、日本公認会計士協会の倫理規則を参考に、すべての監査業務において、ローテーションを実施する方針としています。
(4)監査契約の新規の締結及び更新
当法人は、監査契約の新規の締結及び更新に当たって、遵守すべき方針及び手続を定めており、監査契約の新規の締結及び更新については以下の全てを満たす場合に限定しており、審査の承認を義務付けています。
- 当法人が、時間及び人的資源等、業務を実施するための適性及び能力を有していること。
- 当法人が、関連する職業倫理に関する規定を遵守できること。
- 当法人が、関与先の誠実性及び倫理的価値観を検討し、契約の新規の締結や更新に重要な影響を及ぼす事項がないこと。
- 当法人の財務上及び業務上の優先事項が、契約の新規の締結又は更新についての不適切な判断につながらないこと。
監査契約を新たに締結する際には、法人の基本方針に合致し、かつ、リスクに対応可能と考えられるか予め品質管理担当者等も含め検討・協議したうえで、審査を受審しています。監査責任者は、独立性を確認するとともに予備調査を実施し、事業内容、内部統制の状況、リスク等を調査し、さらに当法人の人的資源等も検討し、適正と考えられる監査報酬を見積もったうえで、監査契約の締結の可否を検討し、品質管理本部及び監査事業本部の承認を経たうえで、審査を受審することとしています。
また、監査契約の更新においても、監査で判明した事項や内部統制の変化等を踏まえて監査責任者が監査リスクの評価を行い、契約更新の可否の審査を受審することとしています。
なお、監査契約の締結を辞退する原因となるような情報を、監査契約の新規の締結又は更新の後に知ることとなった場合には、品質管理担当理事に当該情報を速やかに報告することを求めており、これらを含めた監査契約の解除に関する方針及び手続を定めています。
(5)監査業務の実施
①監査ガイドライン等
当法人には多様な経歴・専門性を持つメンバーが所属しており、それぞれの知識・経験を結集できる体制としており、担当者のバックグラウンドに依存することなく、常に一定水準以上の監査品質を確保する体制を構築しています。
監査技術部において、日本公認会計士協会から公表されている監査基準報告書等を補完し、より具体的な判断基準等を示した監査ガイドラインを整備し、継続的に改訂しています。また、監査調書の作成を支援する監査調書様式を導入しています。監査調書様式は、監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」に準拠しつつ、法人の特性や留意点を反映したうえで監査手続が漏れなく、適切に実施できるように作成しています。さらに、監査先に対応した独自の監査調書様式も開発しています。監査調書様式は継続的に改訂しており、最新の監査基準や監査上の課題にタイムリーに対応しています。監査ガイドラインや監査調書様式の改訂が行われた場合には、通達を発出するとともに、必要に応じて研修を実施し、その内容の十分な理解と周知を図っています。
上記の対応により、各業務チームにおいて必要な監査手続が実施され、当法人の監査品質の向上に寄与しています。
②監査調書
当法人は、すべての監査業務において、電子調書システムを利用しており、監査調書の作成及び査閲並びに保存に関して規定化しており、監査報告日前に電子保存する等により、監査調書の改ざん防止を徹底しています。また、紙調書の保存を一部限定的に認めていますが、今後、電子調書の範囲をさらに拡大していく方針です。
監査調書は、監査報告書日後、当法人で定めた期限内に監査ファイルの最終的な整理を完了することとしており、そのための手続を定めています。なお、各業務チームが期限内に監査ファイルの最終的な整理を完了していることについて品質管理部は全ての監査業務を対象にモニタリングしています。
③監査責任者の選任
・監査責任者の選任
監査責任者の選任にあたっては、監査先の監査リスク、監査責任者の業務経験や専門性等のバランスを考慮しています。当法人は全国に地域事業拠点を持つことから、各監査責任者が居住している地域環境や、多様な経歴を考慮し、その適性・能力を監査事業本部で検討した上で理事会において決定しています。特に監査リスクが高い重要な監査先等については、監査先の状況等を踏まえて適任者を選任しています。
・監査補助者のアサイン
監査業務に従事する職員は監査事業本部に所属し、各監査先へ監査業務を提供しています。監査事業本部では、各監査補助者の知識及び能力に応じて業務チーム編成を行っています。
非常勤者の活用については、監査リスク、業務チームメンバー構成、アサインの十分性等を考慮しています。
・業務チーム編成における全体調整
監査事業本部の管理担当者は、各業務チームから提出を受けたアサイン計画をもとに、人的リソースの十分性を検討しています。業務チームにおいて、繁忙期等に人的リソースの不足が生じる見込みの場合、管理担当者を通じてアサインを調整することで、職員の労務負荷を平準化し、監査品質の確保を図っています。また、この様な人的リソース調整を伴う人事交流により、各人の専門的知見や能力の向上を図っています。
(5)監査業務の実施(続き)
④監査責任者の役割
・責任
監査責任者は、監査先の監査リスクを評価・検討し、監査リスクに応じた監査計画の立案から監査手続の実施並びに監査意見の形成に至る全ての段階において、業務チームメンバーの指揮・監督及び監査調書の査閲を通じて、監査品質を確保する責任を有しています。また、重要な会計上の見積りや不正リスクへの対応等監査上の判断が難しい場面では、当法人内の専門部署への照会や審査担当者との討議を主導し、その結論を業務チーム全体に共有する責任を負っています。
・専門的な見解の問合せ
専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項に対応するため、専門的な見解の問合せを制度化しています。品質管理本部に問合せ窓口を設置し、問合せの内容により助言者を品質管理担当理事が選任し、業務チームからの問合せに対応しています。当法人は、助言者について、原則として法人内で対応する方針としています。
また、監査責任者は、品質管理本部に対して専門的な見解の問合せを行う責任を有しており、得られた見解に適切に対処することが求められます。
・監査上の判断の相違
業務チーム内で、又は業務チームと審査担当者若しくは専門的な見解の問合せの助言者との間で、監査上の判断の相違が生じた場合、これに対処し、解決するための方針及び手続を定めています。業務チームメンバーは、監査上の判断の相違の生じるおそれのある事項を認識した場合には、速やかに監査責任者に報告するとともに、監査責任者は適時に審査担当者に事前相談を行うこととしており、業務チームと審査担当者との間の監査上の判断の相違については、本部審査会の審査を受けることとしています。
なお、監査上の判断の相違が解決するまで監査報告書を発行することは認められていません。
(5)監査業務の実施(続き)
⑤審査
・審査体制
当法人では、審査を所管する本部審査会が独立して運営されており、審査に関する規程の立案、審査項目の制定及び周知、審査担当者の選任及び解任、特に重要と認められる個別事項の審査を実施する等、審査を適切に実施する体制を構築しています。本部審査会は会長、副会長、事務局長を含む社員会で選任された本部審査員で構成され、全会一致による同意を原則としています。
当法人では、すべての監査契約に対し業務チームから独立した審査担当者を選任しています。選任に際しては、業務経験、業種知識、継続関与期間等を総合的に評価し、十分な審査時間の確保を含む適性と能力及び適切な権限を有しているかを踏まえて本部審査会が決定しています。
審査担当者は、監査契約の締結や監査計画から監査意見形成まで、業務チームが行った重要な判断及び到達した結論についての客観的評価を実施します。また、重要な案件や監査リスクが高いと判断された監査先等特に重要と認められる事項については、審査担当者による審査に加えて本部審査会による審査を受審するものとしています。
なお、審査制度に関する変更事項があった場合には、本部審査会等が全社員及び職員向けに通達を発出するともに、必要に応じて変更事項に関する研修を行い、審査制度の周知徹底を図っています。
・受嘱に係る審査制度
当法人においては新規・継続を問わず監査契約締結前に受嘱審査を必ず実施します。審査担当者は、監査目的や範囲、内部統制の状況、不正リスク、当法人の監査資源等を総合的に審査します。新規受嘱の場合、監査責任者が監査リスク等を検討した結果について、品質管理本部の検討を経て、本部審査会が新規契約審査として審議を行っています。新規契約審査終了後に本部審査会が審査担当者を選任し、審査担当者による受嘱審査を受審することとしており、監査リスクが高い場合、本部審査会の受審を義務付けています。
継続受嘱の場合も、監査責任者が検討した結果について、前年度監査の結果や経営環境の変化を踏まえて、原則として前年度の決算に関する審査が完了する前に審査担当者による受嘱審査を受審することとしています。なお、監査リスクが高い監査先の継続受嘱の可否については、本部審査会の審査の受審も義務付けています。
・意見形成に係る審査制度
監査意見を形成する過程では、時期等に応じて計画審査・決算前審査・決算審査の3段階の意見審査の受審を求めています。審査担当者は、各段階で監査調書や判断根拠を詳細に検証します。
監査実施の過程で判明した重要な項目については、検討漏れがないことを「審査検討事項チェックリスト」を用いて網羅的に確認し、該当がある場合、あるいは本部審査会会長又は副会長が指示した事項については、審査担当者は適時に個別審査を実施し、当該論点に関する監査先の主張及び業務チームの見解について慎重に評価します。さらに、監査リスクが高いと判断した場合、本部審査会においても深度ある検討を実施する体制を整えています。
(5)監査業務の実施(続き)
⑥不正及び不祥事への対応
監査責任者は、監査先の不正や不祥事(以下、「不祥事等」)に適切に対応するため、業務チーム内の討議において不正リスクを検討し、監査計画を立案しています。
また、監査先の不祥事等に対応する組織として、不祥事等対応室を設置しています。監査責任者は、監査先で不祥事等が発生した場合には、不祥事等対応室に報告するよう定めており、不祥事等対応室は必要に応じて業務チームに対して初動対応や助言を行い、組織的に不祥事等に対応する体制を構築しています。
なお、不祥事等対応室では、報告を受けた不祥事等を分析し、その発生原因や監査リスクの検討、さらに監査手続における留意点を不祥事等事例研修として当法人内部に周知し、不祥事等に対応した監査品質の向上を図っています。
(6)情報と伝達
・当法人内外の情報連携
監査品質の維持・向上を図るためには、当法人内の全ての社員及び職員に必要な情報が共有されるとともに各監査現場の重要な事項が適時に報告され、法人運営や監査上の検討が適切に行われる必要があります。このため、当法人内の各会議体で、当法人の運営や品質管理における重要事項に関する情報共有を図るとともに、社員及び職員が参加する研修会等を開催し、会計論点や監査手続等を検討・共有することで、組織横断的な情報共有を図っています。また、監査に関連する留意事項の発信や規程等の制定・改訂時には、通達等を発出して周知を図っています。規程類や通達等については、ポータルサイトに掲載し、いつでも確認できるようにしています。
当法人の品質に関する外部とのコミュニケーションとして、監査先の監事・監査役に当法人の品質管理体制及び監査品質向上の取り組みを説明しています。また、外部の品質管理レビューや検査の結果を受領した場合には、その結果に関するコミュニケーションも行っています。
なお、当法人は、上場会社等の監査先がないため、市場関係者との対話は実施していませんが、年次報告書及び監査法人のガバナンス・コードの適用状況をホームページに掲載し、当法人の品質管理への取組みを公表しています。
・監査ホットライン制度
当法人の監査業務等に係る不正・粉飾及び違法行為等(社員又は職員の独立性違反等を含む)に関する情報を受け付ける窓口として「監査ホットライン」を開設しており、当該情報に適切に対処するための方針及び手続を定めています。なお、ホットライン制度の通報窓口として、「内部通報窓口」及び「外部通報窓口」を設けており、当法人の社内ポータルサイトやホームページにおいて、対象とする情報の範囲、情報提供の手段等を公開しています。
通報があった場合、通報者の保護に十分配慮したうえで、通報内容の調査を行う等により事実確認し、必要な対応措置を施しています。
なお、2025年7月に法務部を設置し、通報対応等に適宜関与する体制を強化しています。
(7)監査事務所間の引継
監査人の交代に際して、当法人が前任監査人となる場合及び後任監査人となる場合の双方について、監査業務の引継が適切に行われることを合理的に確保するため、監査基準報告書900「監査人の交代」に準拠して、監査業務の引継に関する方針及び手続を定めています。
当該方針及び手続には、当法人が前任監査人となる場合における監査上の重要事項の後任監査人への伝達や後任監査人から要請があった場合における監査調書の閲覧に応じるための方針及び手続に加えて、監査責任者による品質管理担当理事への引継状況の報告に関する方針及び手続が含まれています。
また、当法人が後任監査人となる場合についても、新規契約審査・受嘱審査の際に、前任監査人との引継状況を確認することとしています。
(8)品質管理システムのモニタリング
品質管理システムのモニタリングの目的は、当法人の品質管理システムの整備及び運用状況の有効性を当法人が自ら検証し、品質管理システムに関する不備事項を識別・評価して、是正・改善活動を行うことにより、監査品質の継続的な向上を図ることにあります。
・モニタリング体制
当法人は、「監査に関する品質管理基準」及び品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」に基づいてモニタリング活動を行っています。モニタリング活動は、監査モニタリング部が担っています。監査モニタリング部の担当者は、監査経験豊富な社員等から選任しており、日本公認会計士協会の品質管理レビューアー経験者も含まれています。
・モニタリング活動
モニタリング活動は、完了した監査業務の検証とそれ以外の品質管理システムのモニタリングから構成されています。
完了した監査業務の検証の対象とする個別監査業務は、監査先の監査リスク等を考慮したうえで、少なくとも3年に1回はすべての監査責任者が検証を受けるように選定しています。検証の結果、発見事項がある場合、監査意見に影響を与える重要な不備事項か否かを判定します。発見事項に対しては、業務チームは必要な是正措置を検討し、その内容は監査モニタリング部に共有・評価されるとともに、審査担当者にも共有され、是正措置に関する監査手続も確認される体制としています。
また、検出された発見事項とその根本原因を分析し、品質管理システム全体への影響を検討するとともに、発見事項に対する当法人としての対応方針も含め研修において周知することで、法人全体での再発防止を図っています。
品質管理システムのモニタリングは、品質管理システムの構成要素別に、その整備状況及び運用状況を評価し、不備事項の有無を検討しています。その内容は、経営協議会に報告され、不備事項があった場合、担当理事が必要な是正措置を検討しています。その結果は品質管理委員会でその対応方法を評価し、実施した是正措置の実施状況は、監査モニタリング部においてモニタリングしています。
監査責任者のカバー割合
(2024年6月期:48%、参考 2023年6月期:42%)
監査意見に影響を与える重要な不備事項
(2024年6月期:0件)
・品質管理システムの評価結果
「監査事務所における品質管理」において、「品質管理システムに関する最高責任者は、品質管理システムを評価しなければならない。当該評価は、特定の基準日において、少なくとも年に一度実施しなければならない。」と定められています。
上記のモニタリング活動の結果、識別された不備事項に対して適切に是正措置を講じており、評価基準日(2025年6月30日)において、当法人の理事長は、品質管理システムの最高責任者として是正措置の実施状況を含め当法人の品質管理システムを評価した結果、当該システムの目的を達成する合理的な保証を当法人に提供していると結論付けています。
3. 人的基盤
(1)人材に関する基本方針
①人材採用方針と監査品質確保への取り組み
当法人は、基本理念である「地域社会の持続的発展への貢献」、「職業的倫理観に基づく信頼関係の構築」、「公正な社会実現への寄与」を踏まえ、地域を中心に人材を採用しています。当法人の監査先は日本全国の地域に立地しており、当法人は本部事務所のほか43都道府県に国内サテライトオフィスを有しています。そのため、大都市圏だけでなく、UターンやIターンで地方での勤務を志向する人材も含め、全国各地で経験豊富な公認会計士等を採用しています。
採用にあたっては、応募者から履歴書や職務経歴書を入手するとともに、複数の社員による面接を行い、適性及び能力を検討し、採用を決定しています。さらに、全体の人的資源の異動状況を踏まえた上で計画的に採用活動を行うことで、十分な監査資源を確保し監査品質の維持・向上に努めるとともに、効率的な監査を実施しています。
②多様な人材の確保
当法人では、多様な人材の確保のため、60歳以上の職員の継続雇用にも積極的に取り組んでいます。社員も含め、十分な経験を積んだ人材を多く含んだ人員構成となっており、監査品質の確保だけでなく、組織の安定性や若手職員の育成にも寄与しています。
また、出産・育児・介護等ライフサイクルの変化に合わせて、職員が柔軟な働き方を実現できるよう、育児・介護休業等に関する規程を整備し、後押ししています。「(4) 働きやすい職場環境の推進」に記載のとおり、職員がより一層活躍できる職場環境の整備を進めています。
なお、常勤職員が業務の中核を担うことで監査品質を確保しつつ、主に監査繁忙期における柔軟な人員調整や常勤職員の労務負荷の適正化を図るため、非常勤職員を活用しています。
(2)人材育成と研修制度
①研修計画と実施体制
当法人では、多様な経歴を持つ社員・職員が知見と能力を高め、組織として共通の目標に向けて協働できるよう、社員・職員の研修を監査品質向上に不可欠な施策として位置づけています。
社員・職員の研修は、管理部内に人材育成グループを設置し、品質管理本部や監査事業本部等と連携して経営目標と事業計画を踏まえた年間研修計画を立案し、理事会の承認を得て実施しています。
②研修制度及び研修コンテンツ
社員・職員の研修は、継続的専門能力開発(以下「CPD」という)制度に準拠して管理しており、集合研修に加えてEラーニングシステムも導入し、社員及び職員の積極的な受講を奨励しています。人材育成グループはCPD単位要件の充足状況や不正受講の有無を継続的にモニタリングしています。
研修環境の向上のため、当法人独自の研修コンテンツを充実させている他、日本公認会計士協会の提供するEラーニングを受講できる環境を整備しています。人材育成の観点からバランスのとれた研修計画を立案しており、倫理規則の改正に伴う研修や、マネーロンダリングやリース会計基準といったその時々の重要なテーマを重点的に取り上げ、幅広い知見・経験を獲得する機会を提供しています。
なお、集合研修も重視しており、特にブロック単位や業種別のグループ単位で実施する研修では、参加者同士の議論・意見交換の機会を増やしています。
平均研修受講単位数
| 項目 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| 全体 | 51.0 | 52.4 |
(注)社員及び全常勤職員平均値
③法人内連携強化のためのブロック及び業種別グループ研修
ブロック研修や業種別グループ研修を重要施策として位置付け、毎年1回以上開催することとしており、以下の目的をもって研修を実施しています。
- みのりとしての一体感を醸成する。
- 職員同士が活発な意見交換を行うことで、新たな観点や知見に触れ、今後の業務に活用する。
上記目的を達成するため、ブロック等の研修は、集合研修形式で行うとともに、ディスカッション方式も取入れ、各監査現場で実践していることや課題等を討議することにより、当法人の組織目標の共有、職業的懐疑心の醸成を含む監査品質の向上を図り、自律的かつ高品質な監査対応を行う体制の構築を進めています。
④みのり塾
若年層の職員の育成のため、「みのり塾」を毎年開催し、職員の職業的懐疑心の醸成や不正対応力強化を図っています。2024年度には2回開催し、延べ48人が参加しています。
⑤資格取得支援制度
公認会計士、税理士、システム監査技術者、公認情報システム監査人、中小企業診断士、不動産鑑定士等に対する資格取得支援制度を設けています。2024年度は、公認情報システム監査人2名、公認会計士試験合格者2名が本制度の適用を受けており、職員のキャリアアップを後押ししています。
(3)人事評価制度
①当法人の人事評価制度
当法人では、社員と職員の人事評価を区分して実施しています。
・社員
社員の人事評価は、社員の人事評価に関する規程に基づき、目標設定・実績評価フォームに従って実施しています。監査モニタリング部が実施する完了した監査業務の検証結果も評価の一要素として設定し、これらを総合的に判断します。また、社員との面談を実施し、過去1年間の実績評価や今後の目標について協議した上で、理事会の承認により社員の人事評価を決定しています。
・職員
職員の人事評価は、品質管理(職務遂行結果、業務改善、能力開発、専門的能力)、組織貢献(チームワーク、知識伝達、報告・連絡・相談、組織運営)、指導管理(リーダーシップ、人材育成)、監査先とのリレーションの視点から、職階の特性に応じて評価項目の配点に軽重を付けて実施しています。特に品質管理の評価項目に高いウェイトを設定し、品質管理を重視した評価を実施しています。
また、自己評価制度を導入しており、評価者との面談を通じて人事評価結果と自己評価結果の乖離を把握し、職員の能力向上と職場環境整備に努めています。
②人事評価システムの導入と活用
2023年度上期より人事評価システムを一部導入し、2024年度から運用を開始しています。
(4)働きやすい職場環境の推進
①休暇制度の利用状況
適切な休暇取得は、職員の健康維持と集中力の向上を通じて業務の正確性や監査品質の向上に寄与します。そのため、当法人は年次有給休暇制度に加え、リフレッシュ休暇制度(年5日)を導入しています。2025年6月期の年次有給休暇とリフレッシュ休暇を合わせた取得日数は、全常勤職員の平均値で16.8日/年となり、2024年6月期と比較して1.5日/年増加しました。
年次有給休暇・リフレッシュ休暇平均取得日数
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 全体 | 15.3日/年 | 16.8日/年 |
(注)全常勤職員平均値
②柔軟な勤務形態と労働時間
当法人では、リモートワークを導入しており、情報セキュリティに留意しつつ、自宅等での勤務を一部認めています。時差出勤制度も労働環境の整備の一環として導入しており、柔軟な勤務形態を提供しています。加えて、監査業務の効率化等により、職員の残業時間の削減を図っていく方針です。全社員・職員の年間平均労働時間は約1,800時間であり、近年は概ね同水準で推移しています。
平均労働時間
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 全体 | 1,798.7時間 | 1,799.0時間 |
| 社員 | 1,841.1時間 | 1,833.5時間 |
| 職員 | 1,790.0時間 | 1,791.5時間 |
③福利厚生の充実
働きやすい職場環境の実現を目指し、2025年6月期に「福利厚生アンケート」を実施し、社員職員の意見を幅広く募ったうえで、新たな福利厚生制度として「ベネフィット・ステーション」を導入しました。
また、長期障害所得補償保険(GLTD制度)に加入しています。
4. IT基盤
当法人は、監査業務におけるITの活用を重視しており、ITに対する投資を継続的に実施していく方針です。IT関連費用は、効率化に努め費用圧縮を図るものの、売上高に対する比率は今後上昇していくと想定しています。
社会環境が激変する中、当法人の業務においても、従来の延長線上ではない迅速なデジタル化の推進が求められています。当法人は、事業や業務に共通性がある協同組合に対する監査業務を中心に事業展開しており、業態の均質性から監査業務の変革を進めやすい特性を持っています。この特性を活かして、次世代の監査業務を推進できるように検討を進めています。
2025年6月期:3.3%(2024年6月期:3.0%)
(注)2024年6月期は臨時的な費用をのぞいて計算しています。
(1)デジタル化に対する方針
・ITツールの活用
大量のデータを扱う監査業務においては、ITの活用が不可欠です。当法人では、ITツールの大量データ処理能力を最大限に活かし、仕訳テストにおける大規模サンプリングや取引データの網羅性検証等の場面でACL(Audit Command Language)等のITツールを活用しています。これにより、作業時間を短縮し、標準化された監査手続の実施と監査品質の均質化を図っています。
なお、ITツールを用いたデータ分析の監査業務への利用拡大についても検討中です。
・ITに関する研修
当法人は、デジタル技術が急速に進展する現代において、監査品質の向上と業務効率化を両立させるため、IT人材の育成を重要課題の一つと位置づけており、ITに関する研修を充実させています。
当法人では、ITツール操作基礎研修やIT技能者認定研修といった基本的なプログラムに加え、監査現場でデジタル技術の活用を実感できる実践的な研修を提供しています。
・監査調書のデジタル化推進
監査業務の効率化と品質向上を目的として、当法人ではすべての監査業務において電子調書システムを導入し、監査調書の電子化を推進しています。監査調書のデジタル化は、公認会計士業界全体で課題とされている調書改ざん防止に対応する重要な技術であると同時に、全国の地域に拠点が分散している当法人にとって、適時な監査調書の査閲に不可欠であり、リモート監査環境の確立にも寄与しています。
また、監査ファイルの最終的な整理に関するアーカイブ申請後の処理についてシステム的に対応することで、人的ミスを削減するとともに、監査ファイルのアーカイブ漏れの確認業務の効率化を図っています。
・生成AI活用の推進
監査業務の高度化と効率化を目指し、生成AIの一部業務での利用を開始しています。生成AIが業務チームの有する高度な専門知識を補助的にサポートしており、業務チームの迅速かつ適切な業務遂行を支援しています。
今後も生成AIの活用拡大を図っていく方針であり、情報セキュリティに留意しながら、生成AIの活用方法を検討していきます。
(2)体制
①IT監査グループ
当法人は、監査事業本部の中にIT監査グループを設置し、公認情報システム監査人(CISA)等の資格を保有し、監査法人でのIT監査の業務経験を有している人員を配置しています。
IT監査グループに所属しているIT専門家は、IT技能者認定研修を受講した業務チームメンバーと協力して監査先の情報システムの評価を実施しています。
②新組織体制
監査業務のデジタル対応については、IT監査グループとは別に2023年7月にプロジェクト組織として設置したDX委員会が中心となり、ツールの導入・活用推進や生成AIの活用研究を進めてきました。
さらに、最新のテクノロジーを積極的に活用した高度な分析と効率的な業務運営の両立を図るため、2025年7月にDX委員会をシステム企画グループと統合し、統合デジタル戦略部を新たに設置しています。
(3)セキュリティへの取り組み
当法人では、情報社会の進展に伴うセキュリティリスクの高まりを深く認識し、監査業務における情報資産の機密性、完全性及び可用性の維持を重要課題の一つと位置づけています。多岐にわたる脅威から組織を護るため、先進的な技術と組織的な体制の両面から、以下の通り情報セキュリティ対策を講じています。
・サイバー攻撃への多角的対応
当法人では、巧妙化するサイバー攻撃に対し、全端末に多層防御が可能なセキュリティサービスを導入することで、強固な防御体制を構築しています。リモートワーク環境においては、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)及びセキュリティサービスエッジ(SSE)の概念を取り入れたリモート用VPNを導入し、高いセキュリティレベルを維持しています。
加えて、社員職員の情報セキュリティ意識向上を重要課題と位置づけ、全社員職員を対象とした情報セキュリティ研修と、標的型攻撃を想定した実践的な訓練を定期的に実施することで、万一の事態に備えた迅速かつ的確な対応力の強化を図っています。
・セキュアなリモート監査環境の確立
情報漏えいリスクの極小化と端末紛失時のリスク低減は、リモートワーク推進における重要課題と認識しています。この課題に対し、当法人ではすべての監査用モバイルPCにデータレス化を導入することで、端末側に機密情報を残さない運用を徹底しています。このデータレス化は、リモート用VPNと併用することで、極めて安全性の高いリモート監査環境の構築に貢献しています。
これらの取り組みにより、全国各地での往査や場所を選ばない監査業務を可能とし、社員職員の柔軟な勤務を支援しつつ、最高水準のセキュリティを維持した監査業務の継続を実現しています。
・監査先との安全な情報の受け渡し
監査先との間で発生する重要データの受け渡しについては、従来のメールや物理メディアに依存する方式を見直し、セキュリティと利便性を両立するクラウド型ストレージを積極的に活用しています。これにより、機密性の高い監査データを安全かつ効率的に監査先と共有できる環境を確立し、監査業務の円滑な遂行を支援しています。
5. 財務基盤
当法人は、監査法人として経済的に自立し、独立性を堅持することを目的に、各部室及び拠点と密接に情報連携を図り、財務・予算計画の精緻化を進め、持続可能で健全な財務体質の維持・向上に努めています。
業務収入の推移
(単位:千円)
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | |
|---|---|---|
| 業務収入 | 6,914,750 | 6,821,713 |
| (内訳)監査業務 | 6,819,344 | 6,718,426 |
| 非監査業務 | 95,405 | 103,287 |
非監査業務の主な業務内容は、会計に関する助言や合意された手続等です。当法人は監査業務を中心に活動しており、非監査業務は監査業務に関連する分野、かつ独立性や利益相反等の職業倫理に抵触しない範囲に限定して受嘱しています。
なお、当法人には日本公認会計士協会の倫理規則で定める水準を超える報酬の監査先はありません。